一般社団法人日本航空教育都市構想推進協議会 専務理事 星 尚男氏

府中に航空技術大学のキャンパスを

地元の行政や財界と誘致実現に奔走

 府中市に大学誘致に向けた動きが進んでいる。航空技術大学(仮称)の航空技術系キャンパスの一部を同市内に設けようというものだ。
府中市や府中商工会議所、ふちゅう大学誘致の会と連携し大学の設立・誘致に向けて動いている民間団体がある。(一社)日本航空教育都市構想推進協議会(JCAPI=ジェイカピ)だ。
JCAPIの専務理事を務めているのが星尚男氏。星氏は昨年末、国産航空機の開発という夢を求めて府中市内の企業の役員に就任し、府中と星氏の結びつきが生まれたことで、大学誘致構想が動き始めた。大学誘致のキーパーソンの1人である、星氏に誘致構想などについて話を伺った。

夢をかなえるため府中へ

私が府中へ来たのは「大学誘致ありき」ではありません。自身の長年の夢である「国産航空機の開発」を実現するため、ラジコンヘリコプターや無人航空機のメーカーである㈱ヒロボー(府中市本山町、松坂晃太郎会長)の役員になったことがきっかけです。
ヒロボーで開発を進めている、人を乗せて飛ぶ無人航空機を実用化することが目標です。運用面を含めて実用化できれば、有人ヘリよりも低い運用・機体コストで、救急医療や災害救助、旅客輸送などさまざまな分野に貢献できると考えています。
府中の大学誘致活動に携わることになったのは偶然からです。ヒロボーへ入社する際、松坂社長(現会長)に雑談で「実は私、こういう活動も行っているんです」と、航空教育機関の創設を推進する取り組みをお話したところ、府中でも青年会議所が中心になり「ふちゅう大学誘致の会」を立ち上げていることを教えていただきました。
府中にも大学誘致の要望があることを知り、航空技術大学の全体構想を見直しました。大学機能を分散して航空技術系学部の一部を府中に置く形であれば、実現可能性があると判断しました。

航空機関連の技術者不足に危機感

航空技術大学(仮称)の創設を目指す背景には。日本の航空機業界の技術系人材の不足があります。整備士やパイロットが不足する一方、航空需要の世界的な伸びが見込まれる中で国内養成機関は不足しています。
また航空自衛隊や民間企業で航空機に関連する業務を経験しましたが、ほとんどの航空機は海外製です。国産があっても技術や部品の大半は海外に依存しています。このままでは市場拡大が続く航空機産業から日本が取り残される恐れがあります。
無人機の分野で注目を集めるドローン(マルチコプター)も、国産メーカーは増えていますが部品は海外製も多いのが現状です。日本の航空産業や空の安全を将来的に考えたとき、果たしてこのままでよいのかと不安を持っていました。無人機分野を含めた航空機開発・製造の技術者を国内で養成する必要があると痛感しています。

JCAPIの活動について

私とJCAPIとのかかわりは前身の組織を含めると2013年ごろからで、その年の秋には航空整備士の訓練センター構想について、国土交通省と意見交換を始めました。民間のボランティアとして手弁当でのお手伝いからスタートしています。
JCAPI側としては、航空技術教育が可能であれば高等教育機関の組織形態にこだわりはありません。先行して候補地の1つになっていた浜松市が大学組織での設置を要望し、今回府中でも大学を希望されていることから、大学という形で進める構想になりました。府中と関わることになったご縁もあり、半年前から府中での大学誘致基本構想のもとになる調査や資料作成にJCAPIが協力しています。

府中が候補地となる理由

府中市には航空技術大学(仮称)の航空技術系学部のキャンパス誘致を検討しています。規模や具体的な教育内容の検討はこれからですが、無人機を含めた航空機の開発・製造に関わる人材を養成したい。
中でも小型無人機は今後、十分な安全性が確立できれば、市街地や人のいる場所の上空でも目視外飛行ができるよう検討されています。府中なら大学や関係施設がテスト運用する、無人機の運用コース設定や無人機用ヘリポートの確保が可能と考えています。府中で新たな無人機運用モデルのノウハウが蓄積できるように提案したい。
また府中周辺は人材の供給先として地元無人機メーカーだけでなく、今後航空部品産業に進出できる可能性がある製造業が集積しています。地域の新産業としての航空技術に関連した産業の育成にも期待を寄せています。

解決すべき課題は…

まずは地元の機運の高まりです。府中市、広島県、備後エリアで航空技術大学を求める声がもっと大きくなってほしい。地元製造業に卒業生の受け皿となる、実際に航空技術産業へ進出する企業がどんどん増えることも必要です。せっかくの人材が市外に流出してばかりでは、大学進出の意義も半減します。誘致や受け入れのための体制作りも急がれます。今年に入り5月以降、府中商工会議所で航空技術大学誘致に向けての説明会や企業勉強会を始めました。7月には府中市で誘致に向けた専門部署がスタートしています。民間ではふちゅう大学誘致の会が誘致実現に向けた署名活動に取り組んでいます。9月には市の誘致基本構想が固まります。
大学の開学は2020年が目標です。時間は足りない状況ですが、航空整備士育成が深刻な状況となっており、一刻も早い大学の実現が望まれます。JCAPIも大学誘致実現に向けて引き続き協力してまいります。
また府中周辺は人材の供給先として地元無人機メーカーだけでなく、今後航空部品産業に進出できる可能性がある製造業が集積しています。地域の新産業としての航空技術に関連した産業の育成にも期待を寄せています。

プロフィール

星尚男氏(ほしたかお)
47歳。九州出身。高校卒業後、防衛大学校へ進学。卒業後は航空自衛隊に着任した。在職中には一時期、政府専用機の運用・整備も担当。また国際緊急援助隊のメンバーにも名を連ね30カ国・地域への渡航経験がある。2011年、米軍の東日本大震災被災者支援の作戦「TOMODACHI」に参加後、退職。情報通信系事業を経て、昨年12月にヒロボー㈱執行役員副社長に就任。無人機で自身の夢だった「国産航空機製造」の実現に向けたスタートを切った。JCAPIには2013年ごろから前身となる任意団体に参画。昨年JCAPIの設立に伴い専務理事に就任した。

一般社団法人日本航空教育都市構想推進協議会
本社:福山市船町6番20号
事務局:東京都新宿区2-12-13 新宿アントレサロンビル2階
代表理事:石島辰太郎
設立:2016年4月
事業内容:航空教育機関の創設を推進する事業、航空教育機関に関連した調査・研究ならびに成果の公開・提言、会員相互の啓発を図る交流会や研修会、およびフォーラムなどによる啓発活動、プロモーション活動による次世代育成支援活動の推進、政府・官公庁に対する意見の具申・調整および折衝

ホームページ:https://jcapi.jp
Facebookページ:https://www.facebook.com/jcapi.jp/

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